静岡県三島市産 ミドリシジミ♀

ご覧のとおり、裏面前翅中央から外側に向かって、赤い紋が出ています。表ならさしずめスーパーA型と言えるような感じ。裏スーパーAとでも言うのか…。後翅も、紅角紋の内側に同様に赤い紋が広がっています。

表は…チョボチョボのA型で、表のスーパーA型斑が透けて見えているのではありません。

斑紋異常なのか、色彩異常なのか…よくわかりませんが、とにかくカッコ良くて綺麗です。


キアゲハ:北海道富良野市産 野外採集

何の変哲もないキアゲハ。でもよく見ますと…尾状突起の一部を除いて、翅の縁を黄色い縁毛が取り囲んでいます。内側の黒い部分は翅脈の所がぐっと張り出してギザギザになっていますのでその部分は写真では黒い縁毛のように見えてしまうかもしれませんが、現物では細いですが黄色い縁毛で前後がつながっています。前翅は裏の写真の方がわかりやすいかもしれません。ということで、キアゲハのイエローバンドでした。

普通種のキアゲハはあまり採らないので、比較検体としての標本がドイツ箱1箱分くらいしかありません。従って、こういうタイプが珍しいのか当たり前なのか判りませんが、少なくともひと箱分の標本を見る限りでは、他には1頭もイエローバンドは認められませんでした。


馬狩型をもう一つ。2015年の採集・観察情報に展翅前の写真を載せた個体です。展翅が出来上がって標本写真を撮影しました。今度は♀。斑紋は下の♂の項で記載した通り前翅前縁に向かって黒条黄条が内曲りになり同心円状。右翅の黒条なんてよく見ると曲がりすぎて下向きになりそうなくらいで間違いなく馬狩型。翅型は丸く、馬狩で出るマルギフの特徴も備えていて、右前翅の一番内側の黒条が一部途切れてH。マル馬狩Hのトリプル異常みたいです。大三元字一色四暗刻のトリプル役満くらいの出現頻度でしょうか。

実は、翅脈異常も伴っていて、それによって後翅のオレンジ紋の一部が直線的につながっているのも判るかと思います。これが後翅全周に出るとクジャクなのかなと。クジャクの成因と同じだとすれば、ごくごく一部ですが部分クジャク合併ということにしてもいいのかもしれません。そうなると4重異常です。

馬狩型の特徴は翅型が縦長になるとのこと、マルギフの特徴とは正反対で、同時出現なんてありえないと思っていましたが、詳しい方に見てもらったところマルギフなのに縦長に見える、とのことでお墨付きを頂きました。


異常型の範疇に入るのか判りませんが、通常と違うタイプということでここに載せてみました。
岐阜県大野郡白川村馬狩周辺で得られるギフチョウにたまに見られる、俗に馬狩型と言われるやつです。完全に馬狩だけにしかいないわけではないようで、隣の大窪部落のものなども見せてもらったことがあります。

皆さんご存知でしょうから、解説なんかは不要かと思いますが、一応つけておきます。

翅型が縦長になること、黒条・黄条が内側に曲がりこむようになっていてあたかも同心円状の黒条・黄条になることが特徴。(とのことです。)

 


チャバネセセリ異常型:2014.4.12. 愛知県名古屋市産 野外採集

一時期フィーバーした名古屋のムシャクロツバメを探しに行った時に採集した個体。

白点が全て消失しており、種の同定が最初はできませんでした。

裏展翅してびっくり。白点が消失どころではなく、後翅では黒点化していて、クロボシセセリの出来損ないみたいになっていました。

展翅が上がってよく観察したら、表も白点は消失しているんですが、ラッキーなことに♂の性票だけは残っていて、それでチャバネセセリだろうと見当が付きました。

表の写真も載せたいのですが、現在針の持ち手側を固定して撮影する台が傷んでしまっているので、それが直り次第撮影して追加します。


パイパン型の追加。

2013.5.26. 長野県松本市産 野外採集。

採集観察情報に載せた個体。

飼育品の低温処理なんかで同様の変化を見ますが、これも野外で自然な低温処理が偶然起こったため出来上がったものなのでしょうか。


斑紋異常の最初は、いわゆるパイパン型といわれるやつ。4種提示します。

上段左から

サツマシジミ♂:大分県某所 5月野外品

ルリシジミ♂:北海道旭川市春志内 5月野外品

ハマヤマトシジミ♂:沖縄県石垣市登野城 3月野外品

下段

ヒメシジミ♂:長野県南安曇郡安曇村白骨温泉 7月野外品


続いて、パイパンまではいかないけれど点々の消えた部分のあるやつら。

2種提示。他にもありますが良い画像が見当たらず、撮影しなおして追加します。

タイワンツバメシジミ♂:宮崎県某所 野外品

スギタニルリシジミ♂:長野県南安曇郡安曇村島々谷 野外品


他の斑紋消失タイプをまとめて提示。

上段

マサキウラナミジャノメ眼状紋消失:2頭ともに石垣島 野外採集。

面白いことにいずれも片側のみ。そして偶然にも左右が違います。

下段

ヒョウモンモドキ:兵庫県産 累代飼育品 

ホメオも銀色もこれもぜーーーーんぶ同腹。真ん中の画は表です。触角の長さの違いは矯正を失敗して変な方を向いているのではなく、元々左右でだいぶ長さが違います。

ウラナミアカシジミ:長野県伊那市 野外採集。

見事に一本飛ばしで線が消えています。


目無しウラジャノメ:北海道旭川市産。これは有名なタイプですね。

異常型というほどのものではないですが…

これはあまり聞かないものです。

目無しオオヒカゲ:愛知県豊田市産。右は同所同日採集の正常型との比較。

成因はウラジャノメと同じなのでしょう。いずれも、眼状紋そのものが正常型に比べ消退傾向を示しています。オオヒカゲでは前翅の先端からは眼状紋は消失しています。


次は、流れモノをいくつかまとめて出しておきます。

上段左:ミヤマカラスシジミ♂ 山梨県富士河口湖町産 野外品。中部地方のベニモンカラスと同じ系列の白線流しタイプ。今まで見たことあるのはこれ1頭のみ。2011.7.18.採集。

上段中・右:ヒメシジミ♂ すべて山梨県富士河口湖町産 6月野外品。右のような後翅黒点つながりの軽微異常は多数みられるでしょうけど、前翅は比較的安定しているように思うのは私だけでしょうか。中は後翅はノーマルながら前翅のみ黒点が横に引っ張られた感じの異常で、あまり見かけません。

中段左:ウラジャノメ♂ 目玉が後翅前縁の一個だけ横に伸びて、涙型になっています。

中段中:クロツバメ 松本市産 5月野外品。どうもクロツ専門家に言わせると、紋流れより外縁の黒点消失や後翅の赤点消失の方が目につくらしいです。シロートは目立つ異常しかわからない…。

中段右:スギルリ♂ 島々谷産5月野外品。流れた一列だけがやけに目立ちます。

下段右:ヒサマツ 川根本町産 飼育品。説明不要でしょう。

下段中:ベニシジミ 旭川市神居古潭産 6月野外品

下段右:ヒメシジミ♀ 松本市扉鉱泉産 6月野外品

ちなみに…

流れたヒメシジミ♀と、先に出したパイパンヒメシジミ♂を並べると…

左写真のように究極の白黒になります。